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『花箋』 くちなし2

くちなし2
その学校は私立のプロテスタント系の中学と高校の女子学園だった。
軍港を見下ろす丘の上に建っていた。
毎朝礼拝などがあって賛美歌も覚えた。
制服は紺色だったがやえちゃんは黒地でダーツを沢山入れた特注のものを着ていた。
「わたしたちは、今、一番美しくあるべき年頃なんだよ~」というのがその言い分だ。

学校帰りに一度だけやえちゃんの家にお邪魔したことがあった。
こちらは別荘と違って普通の古い家。
キチンと地味目の着物を着たおかあさんが紅茶を持ってきて下さった。
やえちゃんによると「ママ」のユニフォームだということになる。若い子を引き立てるために地味に装ってるのだそうだ。
おかあさんは私のことを「お嬢さん」といい「先生にはお世話になってるんですよ」と言う。
先生とは父のことらしい。父には保険関係で店の女の子を含めてなにかと相談に乗って貰っていたのかもしれない。米兵相手の商売だからいろいろな問題があるようだ。
勿論、今にして思えばだが。
今の私ならもっと詮索するだろうがその時は、言いたい放題でおかあさんに説教するやえちゃんに目を瞠ってるばかりだった。

やえちゃんと私は女子高校にありがちなベタなつきあいではなかった。折々に隠れるように行動を共にするだけで違うグループに属していた。だから同級生たちは私たちの関係に気づかなかった。
が、やえちゃんとの内緒の蜜月時代は短かった。
やえちゃんは真っ暗な空気を纏っている転校生の私にちょっかいを出しただけなのかもしれない。ごく普通のクラスメートとして過ごし、やがて受験勉強の時期に突入していった。

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